4-2.クリエイターが参加すべき場所

クリエーターの経営参加意識とビジネス感覚の育成が重要
 デザイナーが本当にクリエイティブなのかというと、疑問に思います。 それは、これ迄のデザイナーは、アイディアやコンセプトを基に具体的なモノにするのが基本で、アイデアを具現化した後の流通の段階に入るとそう簡単にはいかないからです。エージェントであったり、バイヤーたちと話し合い、交渉もしないといけません。そういうことは、企業体の中では一般に行われていることですが、デザイナーはそのようなことはしませんし、なぜしなければならないのかが解りません。経営者として、そのようなことをデザイナーに任ずるには、何処迄任せたらいいのかが悩ましいのです。製品に具体化してから、それを流通させる段階に大きな課題があって、そこを解決しない限りは英国や香港のようなクリエイティブ産業は日本から生まれるはずがないのです。デザイナーは、経営数字や売り上げや利益だとかいうところまで担保できるのかということになってきます。 要は、責任を負っていないし、経営者もデザイナーにそこまで負わせていません。これが、デザイナーが経営まで入り込めない、そして経営資源になれない理由だと思っています。すなわち日本でクリエイティブ産業を育てる為には、これ迄とは違い、企業や産業というレベルで流通や商売の段階迄もペンと資料含めたクリエイティブビジネスの新しい仕組みやシステムを構築しないとうまく行かないのです。今の日本の産業の中では、中小企業も含め、クリエイターと企業がその企業ビジョンを共有出来るような仕組みを構築し、現地で人材を育成する機能を待たない限り、海外に行っても無理だと思います。クリエイティブ産業を創造する仕組みは、われわれが今まで蓄積してきたノウハウや方法を詳しく分析することで自ずとで出てくると思います。しかし、これ迄のデザイナーは、企業の中での役割として、思いを具現化・表現するという役割が主で、原価とか企業ビジョンを作っていくという役割を担っていませんでしたし、またその責任も持っていない事に問題があるのです。そのことが、これ迄の日本のデザイナーを弱体化させてきたのです。したがってこれから日本がやらなければならないことは、中国や海外に移転していない、技術力を持った中小企業が国内で確固とした立場を築けるようにすることです。そのためには、私たちデザイナーが経営者と経営ビジョンを共有し、経営の一端を担いながら物事をすすめて行くことが必要なのです。

クリエイターが社会や行政に参加すべきである
 経済産業省など、行政と一緒に仕事をする機会を得て一番問題を感じているのは、地域活性化や地方行政にクリエーターやデザイナーが関与していないということです。デザインのことをわかっていない行政の方が地域のモニュメントやランドマークについて議論して決定しているのです。だから日本中の駅前のモニュメントはひどいものばかりになっています。地域の付加価値を高めていくためには、その土地の潜在的な力というものを掘り出していくような人たちが必要になってきます。それが、地元のクリエイターの中から出てきてほしいと思っています。山崎亮さんは、「日本は、多分50人のクリエイターで再生できるね」とおっしゃっていました。 とてもおこがましい話かもしれませんが、実際にそれは可能だという風に思っています。根本的に考えると、日本の大学の教育システム上、デザインを体系的にやっているのはアート系の大学が多いのです。工学系や 経済学系、総合大学等にデザイン学大学科をおいているところが少なく、在っても形だけです。産業にとって重要であると言うことは既に常識になっていますが、旧帝国大学といわれる国立大学にデザインを置いてるところが少ないのです。そのことが何処に影響するかというと、デザインやアートのことが解った官僚が皆無で、デザインや文化、芸術を 国策の中に織り込むことが出来ていません。そこで、著名なデザイナー○○さんのお出ましをいただいて高い税金を使う、というようなことが起こるのです。

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