1-4.デザインの目標とイデオロギー

先進国の理論と新興国の理論
今、議論しているのはデザインの先端的な部分であって、それは議論として解るんですが、世界で見たらそれは一部の人たちの話ではないでしょうか?新興国も含め、モノさえ有れば良いという人たちもいます。日本は先端を行く文明国家として歩んでいて、一番新しいものを常に使ってきました。そういう時代にある消費者がモノを考えるのと、これから発展して行く人たちが考えるのとでは、少し話が違います。日本のように量産をするのか、個に合わせてモノ造りをするのか、そのあたりで既に大きく違っています。そういう意味で、これからはデザイナーというものが解らなくなってくるのではないでしょうか?bop一方で、世界人口の豊かでない40億人の人々に焦点を合わせるデザインを、BOP(Base of the Pyramid)やインクルーシブビジネスと言っていますが、その分野に向けてデザインを導入していこうとしている人々の考えと、私達が日本で対面している、モノで溢れた中でモノ作りをする時に求められる考えとは、決して別物ではないと思います。今、議論しているのは最先端のことかもしれませんが、考え方として、別にそういった一部の人たちのだけの話ではありません。
先進国だけではなく、世の中に欲しいものが無い、これからの生活の在り方が見えない、そんな行き詰まり感がある中で、デザインの役割がデザイン業界以外の方から注目され、どう貢献するかという時に、デザイナー自身がそのようなことに向き合わないのは少し寂しすぎます。

理想(イデオロギー)とデザイン
今の議論は、より多くの人に使ってもらおうとする考えや、ユニバーサルデザインと障害を持つ一人のためのデザインとの葛藤にも結びつきます。この葛藤についても以下の様な議論がありました。ユニバーサルデザインは、米国発の考え方で、「全ての人々は平等でなくてはならない」という理想が根本にあります。インクルーシブデザインは英国発の考え方で、「量産が成り立つ様に、これまで除外してきた人々の参加も求めて、デザインをしていこう」という考え方で、いずれもデザインにおいて、公平で平等というイデオロギーと、量産デザインを何とか両立させようという考え方に立っています。一方で、ユーザビリティーを最大限に満たそうとすると、出来るだけ特定された人に合わせて設計デザインした方が、より精度の高い使いやすい解が得られるという考え方もあります。このことは矛盾するのでしょうか?この議論は、理想とする所が違うだけで、デザインとしての解決策(メソッド)は同じです。問題は、どのような理想を求めるのかというイデオロギーの問題ではないのでしょうか。戦争道具を造るのと、市場主義の商品を創るのと、公共のデザインするのと、たった一人の為の理想のデザインするのとの違いは、どんなイデオロギーで、何を理想としてモノ造りをするのかという問題に辿り着くのではないでしょうか。BOP もユニバーサルデザインもインクルーシブデザインも、基本的には公平で平等であろうとする理想の問題だと思います。しかし、この枠組みの中にデザインの議論は収まらないのではないでしょうか・・・?


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