4-1.前回までの議論と問題提起

①韓国・中国は、デザインを文化産業次世紀の国の重要産業と位置づけ、既に戦略的に動き始めています。中国は、自国や留学で学んできたデザイナーを韓国に人材輸出しているのでです。

②中国のデザイン教育事情
 中国のシンファ大学や清華大学は、アート系と技術系大学を融合した創造大学であり、日本でいうと東京芸大と東京工大を一つにまとめたような大学です。ここで中国のデザイン政策、もしくはデザインのリーダーを育てていくという授業が行われています。ここでは海外、特にアートセンターやRCAの教授を多く招聘し、その教育に当たっています。

③産業資本主義社会における製造業は、もう終焉に近づいてきています。 製造業は全て海外へ移転し始め、日本のクライアントも海外に出始めています。それならば日本のデザイン事務所も、海外のデザイン事務所と闘わなければいけない状況にあるのではないでしょうか。

④ファッション界は一歩先
 ファッション業界は一歩先を行っています。彼らは、海外と闘わなければいけないという状況を既に経験済みなのです。

⑤日本の中小企業の経営者達は、デザインを理解出来ないし、見ていません。

⑥日本から製造業は無くなるかもしれない
工場 国は製造業を見限っています。製造業の海外移転の話に始まって、日本から製造業がなくなるかもしれない、という議論があります。そして国は既に、違う産業に目を向けてはじめています。それは特に医療産業であり、2020年には50兆円の産業にするという意気込みで動いているようです。


⑦デザインは、既にデザインという枠組みを超え、これまでのデザインという概念の範囲を超え始めています。これまでのデザインの枠組みを外し、クリエイティブ産業という視点からいろいろと考えてみるべきではないでしょうか。

⑧もういっそのこと日本の製造業は放っておいて、デザインそのものを海外へ輸出する意気込みでやるのはどうかという議論があります。日本国内で製造業が衰退していくとすれば、新しい産業というものを視野に入れなければなりません。そこで、我々の中でクリエイティブ産業をどう捉えるか、もしくはクリエイティブ産業を作っていくためのストーリーが必要ではないでしょうか。

⑨日本の文化的資源を活用したクリエイティブ産業への道筋
 日本の文化的資源をうまく活用したクリエイティブ産業があるのではないでしょうか。

⑩デザイナーは、デザイン産業のビジョンを投資家にきちんとプレゼンテーションできるくらいの力をしっかりと持っているでしょうか。デザイナーやクリエイターだけではなく、多様な人材で議論を重ねる必要があると思います。

⑪ポスト産業資本主義社会とは、東京大学の経済学者である岩井克人先生が提唱されている捉え方であり、商業資本主義社会、産業資本主義社会、そしてポスト産業資本主義社会に大別されます。商業資本主義社会というのは資本主義の基本であり、地域の価格差から利潤が生まれるのです。 そういった単純な資本主義の基本になる原理です。18世紀以降、産業資本主義社会時代は工場制機械工業による生産の向上と農村部の安い賃金が利潤を生むと定義されています。ポスト産業資本主義社会時代に合った産業の在り方については、現在はいろいろな捉え方がありますが、ポストモダン、ポスト構造主義社会、シミラクールとシュミレーション社会、知識資本主義社会、 第3次産業革命と言ってみたり情報化社会と言ってみたり、いろんなとらまえ方があります。我々デザイナーは、産業資本主義社会で生まれて競って仕事をしてきたが、いまやもうポスト産業資本主義社会に入った日本の中で、デザインをどう捉え直すかといった議論をしていきたいと考えています。


⑫英国のクリエイティブ産業戦略について
英国のクリエイティブ産業は、2005年のGDPの8.2%を占めていると言われています。ロンドンオリンピックの開会式の演出は、まさにその産業資本主義社会の工場制機械化工業からクリエイティブ産業の歴史を追いかけていました。英国のクリエイティブ産業戦略の19の課題・26の対策を

きちんと作り、各省庁が全てこれに沿って動いているのです。

⑬クリエイティブ産業の一つのモデル――アップル
 アップルのパッケージには、Designed by ApDesigned by Apple inCalifornia,Assembled in China

ple inCalifornia,Assembled in Chinaと書いてあります。これまでのような、通り一遍のMade in JapanやMade in Chinaではないのです。ほとんどのグローバル企業がこのように書き始めています。デザインや開発をする場所と、製造する場所は異なってきているのです。

⑭曖昧なクールジャパン・日本はクリエイティブ産業に本当に取り組んでいるのか
クールジャパンということで、音楽にもクリエイティブ産業を見出しています。けれども、皆さんがご存知の現在のクールジャパンは、元々英国のクールブリタニアをそのまま真似ただけのものなのです。実際に、経産省が英国のクリエイティブ産業の構造を調べていますが、それに及ぶような仕組みには全くなっていません。わが国のクリエイティブ産業の市場規模は64兆4000億という風に言われています。しかし、このグラフの下の方にデザインという項目がありますが、1兆円も無いのです。ファッションはもう繊維産業に入っていて、ファッション業界は6兆2千億円あります。その他の産業も兆を超えており、アートですら1兆を超えています。一方で、デザインはまだ3000億のあたりをうろうろしています。しかしこの統計には問題があって、それはインハウスの活動が一切入っていないということです。これが大きな問題で、ここにインハウスのデザイナーや製造業がどんどん外へ出て行ったとき、この人たちの仕事はどうなるのかということです。これも経産省が野村證券に丸投げして調べたことです。製造業の経営者が、デザインを経営資源として捉えているか、いやそうではないという数字が出てきます。

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